糖尿病と物忘れ・認知症の関係とは?進行を防ぐための対策をわかりやすく解説

「最近、物忘れが増えてきた気がする」——糖尿病をお持ちの方やそのご家族のなかには、こうした不安を感じている方も多いのではないでしょうか。実は、糖尿病と物忘れ・認知症には深い関わりがあることが分かっています。

この記事では、次の3つを、専門的な言葉をできるだけ使わずにご説明します。

①糖尿病と物忘れ・認知症は、どう関係しているのか

②なぜ糖尿病だと物忘れが起こりやすいのか

③物忘れ・認知症を防ぐために、糖尿病とどう付き合えばよいのか

今日から実践できることも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

糖尿病と物忘れ・認知症の深い関係

糖尿病があると、認知症になりやすいことが分かっています。研究によると、糖尿病のある方は、ない方とくらべて次のように報告されています。

  • アルツハイマー型認知症(脳に異常なたんぱく質がたまるタイプ)のなりやすさ … 約1.5倍
  • 脳血管性認知症(脳の血管が傷んで起こるタイプ)のなりやすさ … 約2.5倍

特に高齢の方は、血糖値が高い状態(高血糖)が続くと、記憶力や判断力といった頭の働きが低下しやすくなります。

注意したいのが「低血糖」です。糖尿病の治療中に血糖値が下がりすぎる重い低血糖を起こすと、かえって認知症のリスクが高まってしまいます。

さらに、次のような悪循環も起こりがちです。

認知症が進む → 薬を飲み忘れる・インスリン注射がうまくできない → 血糖値の管理が乱れる → さらに物忘れ・認知症が進む このため、血糖値を「高すぎず・低すぎず」ちょうどよく保つことが、とても大切になります。

なぜ糖尿病になると物忘れが起こりやすいのか

ここでは、糖尿病と物忘れがつながる仕組みを、できるだけかみくだいて説明します。少し難しい話ですが、「血糖が高い状態が続くと、脳にもさまざまな悪影響が出る」とイメージしていただければ十分です。

アルツハイマー型認知症との関係

2型糖尿病では、血糖値を下げる働きをする「インスリン」というホルモンが、うまく効かなくなる状態が起こります(これを“インスリン抵抗性”といいます)。

このインスリンには、脳にたまる「アミロイドβ(ベータ)」という小さなたんぱく質を片づける働きもあります。インスリンが効きにくくなると、この“お掃除”がうまくいかず、脳にアミロイドβがたまりやすくなります。

アミロイドβは、もともと誰の脳にもある物質です。しかし、これが固まって脳に蓄積すると、アルツハイマー病の原因になると考えられています。つまり、糖尿病があるとアミロイドβがたまりやすくなり、アルツハイマー病につながると考えられているのです。

脳血管性認知症との関係

脳血管性認知症は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで起こります。

血糖値が高い状態が続くと、血管が硬く・もろくなる「動脈硬化」が進みます。すると脳の血管が詰まる脳梗塞などが起こりやすくなり、脳の働きが低下して認知症につながります。

福岡県久山町で長年続けられている有名な研究でも、血糖値が高い人ほど動脈硬化が進み、脳血管性認知症のリスクが高まることが報告されています。

どちらとも違う「糖尿病ならでは」の認知症

最近では、アルツハイマー型でも脳血管性でもない、糖尿病と深く関わるタイプの認知症があるのではないか、とも考えられています。長く糖尿病をわずらっている方や、血糖値の状態を示す検査値(HbA1c)が高い方などに見られるとされています。

物忘れ・認知症を防ぐための糖尿病対策

認知症を防ぐための糖尿病対策の柱は、実はたった一つです。それは、血糖値を「高すぎず・低すぎず」ちょうどよく保つこと。血糖値が安定すると、低下していた頭の働きの一部が回復することも分かっています。一方で、下げすぎ(重い低血糖)はかえって認知症を悪化させることがあるため、「下げればよい」のではなく「ちょうどよく」が目標になります。

この“ちょうどよさ”を、毎日の食事・運動・薬、そして周囲のサポートで支えていく——これが対策の全体像です。順番に見ていきましょう。

食事と運動で土台をつくる

血糖値をちょうどよく保つ土台は、特別なことではなく、毎日の食事と運動です。食事は、肉・魚・卵・大豆などのたんぱく質を含んだ、バランスのよい内容を心がけましょう。運動は、無理のないウォーキングや軽い筋力トレーニングが効果的です。

気をつけたいのは、食べなさすぎ・動かなさすぎが禁物だということ。栄養や運動が足りないと、筋肉が落ちてしまったり(サルコペニア)、心も体も弱って元気がなくなったり(フレイル)します。

さらに、次のような食品は認知症の予防に役立つと考えられています。

  • 魚、緑黄色野菜、豆類、果物、カレー、コーヒー、緑茶、赤ワイン など

お好みに合わせて、適量を毎日の食事に取り入れてみましょう。

薬は無理なく続けられる形に

食事・運動とあわせて、薬の使い方も血糖コントロールの大切な要素です。飲み薬やインスリンは、できるだけ低血糖を起こしにくい種類を選んでもらいましょう。また、認知症が進むと、薬を飲み忘れたり、反対に飲みすぎたりすることがあります。主治医に相談し、薬の種類や飲む回数をできるだけ減らしてもらうと、毎日の管理がぐっと楽になり、無理なく続けられます。

ひとりで抱えず、周囲の力を借りる

食事・運動・薬を続けるなかで、薬の管理やインスリン注射を自分で行うのが難しくなることもあります。そんなときは、ひとりで抱え込まず、ご家族・介護スタッフ・訪問看護師にサポートをお願いしましょう。ただし、インスリン注射は医療資格のない介護スタッフは行えません。訪問看護師などの医療従事者にお願いする必要があります。

さいごに

最後に、この記事のポイントをまとめます。

  • 糖尿病で高血糖が続くと、特に高齢の方は物忘れ・認知症のリスクが高まります
  • 糖尿病があると、脳にアミロイドβがたまる「アルツハイマー病」や、動脈硬化による「脳血管性認知症」が起こりやすくなります。さらに、糖尿病ならではのタイプの認知症もあると考えられています
  • 予防のいちばんの基本は、血糖値を「高すぎず・低すぎず」ちょうどよく保つこと。食事・運動・薬の工夫で、上手に付き合っていきましょう