訪問看護ステーション立ち上げに必要なメンバー基準
訪問看護ステーションの立ち上げメンバーは、何人そろえれば指定を受けられるのでしょうか。結論からいえば、看護職員を常勤換算で2.5人分以上、うち1人は常勤とし、あわせて常勤・専従の管理者を1人置く必要があります。常勤換算とは、常勤者1人を「1」とし、パート勤務者は勤務時間の割合で数える方法です。
看護職員の人数要件
根拠は「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号。以下、指定基準)の第60条です。看護職員には保健師・看護師のほか准看護師も含まれ、2.5人分に数えられます。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は「実情に応じた適当数」とされ、下限はありません。たとえば常勤が週40時間の事業所で、常勤1人と週24時間のパート2人なら「1+0.6+0.6=2.2」で不足し、パートが週32時間ずつなら「1+0.8+0.8=2.6」で基準を満たします。
管理者の要件
管理者は指定基準第61条で常勤・専従が原則とされ、保健師または看護師であることが求められます(准看護師は管理者になれません)。専従とは他の事業所の職務を兼ねないという意味で、同じステーション内で訪問に出ること自体は妨げられず、実務上は常勤看護職員の1人が管理者を兼ねるのが一般的です。ただし、管理者の訪問時間を2.5人分に算入できるかは自治体で運用が分かれるため、申請前に指定権者へ確認してください。
指定の仕組みと近年の制度変化
介護保険法の指定を受けると、別段の申出をしない限り、健康保険法上の指定訪問看護事業者の指定も同時に受けたものとみなされます(健康保険法第89条)。また令和6年度(2024年度)の運営基準の見直しで、管理者が他の事業所の職務を兼ねられる範囲が整理されましたが、業務を一元的に管理でき、緊急時にも支障なく対応できることが前提で、どこまで認められるかは自治体の判断によります。
メンバーを確保する方法
全国訪問看護事業協会の調べでは、訪問看護ステーションは2025年4月1日時点で全国18,754か所と15年連続で増えており、看護師の採用競争は年々厳しくなっています。
複数の採用チャネルを併用する
無料で使えるハローワークや、都道府県看護協会が運営するナースセンターは、まず押さえたい窓口です。看護師専門の人材紹介会社は、紹介した人の年収の20〜30%程度が手数料の目安とされ、1人採用するだけでも数十万円規模の費用がかかります。知人や元同僚からの紹介も含め、1つに絞らず組み合わせるのが現実的です。
開業前からの発信で母集団をつくる
日本政策金融公庫が2024年10月に公表した「創業のポイント」では、開業前からホームページやSNSで継続的に発信することが勧められています。開業の2年前からYouTubeやInstagramで理念や準備の様子、採用情報を発信し続け、開業前に8名を採用した訪問看護の事例も紹介されており、投稿する曜日や頻度を決めて習慣にすることがコツとされています。
未経験者を育てる前提で採用計画を立てる
病棟勤務しか経験のない看護師も、同行訪問によるOJTや、都道府県看護協会・全国訪問看護事業協会などの外部研修で育てる前提に立てば、採用できる母集団は大きく広がります。研修時間数に法定の基準はなく、どう育てるかは各事業所の設計に委ねられています。
失敗しないためのコツ
人員基準を満たすことと、ステーションを安定して運営できることは別の問題です。立ち上げ時に見落とされやすい3つの落とし穴を挙げます。
「2.5人ギリギリ開業」の危うさ
常勤換算2.5人は指定を受けるための法律上の下限であり、安定して運営できる人数ではありません。基準を下回ると自治体への届出が必要になり、人員基準欠如として介護報酬が減額されます。解消できなければ休止、改善されなければ勧告・命令を経て指定の取消に至ることもあります。全国訪問看護事業協会の調査では、2024年度に廃止した事業所は886か所、休止は355か所で、前年度(701か所・291か所)から大きく増えています。実際、最低人数ぎりぎりで立ち上げた事業所では、1人抜けただけで訪問が回らなくなるケースが少なくありません。オンコールを3人で分けても1人あたり月10日前後の当番になるため、1人の欠員を吸収できる目安として、開業時点で3.5〜4人規模を確保しておくのが現実的です。
オンコール当番の偏りと管理者の疲弊
少人数の体制では夜間・休日のオンコールが1〜2人に偏りやすく、疲弊による離職でさらに負担が集中する悪循環に陥りがちです。管理者が現場対応に追われるプレイングマネージャー状態になると、請求業務やスタッフ育成にまで手が回りません。兼務の範囲が広がったとはいえ、無理な兼務は本末転倒です。
資金繰りと連携づくりの見落とし
介護報酬や診療報酬は、請求から入金までに約2か月のタイムラグがあり、開業直後は収入のない期間が続きます。厚生労働省の令和4年度介護事業経営概況調査では、訪問看護の給与費は収入の7割超(令和3年度決算で73.9%)を占めており、稼働率と1人あたりの生産性がそのまま経営の生命線になります。人員は確保できても、ケアマネジャーや病院からの依頼が来ないという連携不足も、見落とされがちな失敗要因です。
さいごに
訪問看護ステーションの立ち上げメンバーは、常勤換算2.5人以上の看護職員(うち1人は常勤)と、常勤・専従の管理者1人が最低ラインです。ただしこれは指定を受けるための基準であり、日々の運営を安定させる人数とは限りません。オンコール体制や資金繰り、ケアマネジャーや医療機関との連携も見据え、無理なく回る体制を目指して採用計画を立てることが近道です。まずは自治体の指定申請の手引きを確認し、想定するメンバーで常勤換算表を作ってみることをおすすめします。