痛みが起こる時に考えられる原因
排便時に痛みが起こる時に考えられる原因としては、以下のような病気が挙げられます。
裂肛(切れ痔)
便を出すときキュッとした痛みがある場合、「切れ痔」と呼ばれる裂肛が原因である可能性があります。硬い便や便秘により肛門の皮膚が裂けることで排便時に鋭い痛みを感じることが特徴です。トイレットペーパーに少量の血が付着することもあり、排便時の痛みの原因として最も一般的な病気です。
痔核(いぼ痔)
痔核(いぼ痔)は、肛門周囲の血流が滞り血管が腫れることで、便を出すときに痛みを伴います。外痔核の場合は肛門の外側にできるため、指で触れるとわかるのが特徴です。血の塊が中にできる血栓性外痔核の場合は、激しい痛みを生じます。一方、内痔核は肛門の内側にでき、痛みを感じにくいものの出血を伴うことがあります。
便秘症
便秘が続くと便が硬くなり、直腸や肛門の粘膜を傷つけてしまいます。結果として、排便時に痛みや不快感、出血を伴う場合があります。
肛門周囲膿瘍
肛門周囲膿瘍とは、便に混じっている細菌などが原因で直腸と肛門の境目の部分が傷つき、炎症や腫れを引き起こす病気です。症状が進行すると膿がたまって腫れや高熱を伴い、便を出すときに痛みが増強します。放置すると重症化する恐れもあります。
自宅でできる対処法
ここでは、自宅でできる対処法を解説します。ただし、あくまで医療機関を受診するまでの一時的なものと考えてください。
安静にする
まずは、ベッドに横になりリラックスしましょう。ひざを軽く曲げて横向きになり全身の力を抜くと、肛門周囲への圧力が軽減され痛みが和らぎます。
痛みを和らげる
痛みへの対処法は、原因によって異なります。まずは、原因を確認することが大切です。
いぼ痔や切れ痔の場合は、おしり全体を温めると血行が良くなり、痛みが和らぐことがあります。体への負担が少ない半身浴がおすすめです。ぬるま湯にゆっくり浸かりましょう。
また、入浴が難しい場合は、下着の上から使い捨てカイロを当てる方法もあります。ただし、低温やけどには注意してください。
肛門周囲膿瘍の場合は、温めるとさらに症状が悪化するため、横になり患部を冷やしましょう。冷やすことで炎症や腫れを抑え、痛みが軽減されます。保冷剤などをタオルで包み、冷えすぎないようにして患部に当ててください。
病院を受診すべきタイミング
市販薬で一時的に痛みが軽減する場合もありますが、根本的な原因が解消されていない可能性もあります。2〜3日経っても改善しない場合は、病院を受診しましょう。市販薬と医療機関で処方される薬は、同じ成分でも働きの強さが違うため、症状の改善が期待できます。
また、便を出すときの痛みが軽くても次第に強くなったり腫れや熱感があったりする場合、肛門周囲膿瘍の可能性があるため、早期治療が必要です。
便に血がついている場合、裂肛や痔核が一般的な原因です。ただし、黒っぽい血が混じっている場合、大腸がんなどの可能性も否定できません。便器に落ちた血は水で薄くなるためわかりにくく、一般の方には赤く見えがちです。1回でも黒っぽい血が出たら、迷わず受診してください。
「お尻の病気かもしれない」と思っても、恥ずかしさから受診をためらう方もいるかもしれません。しかし、専門医は視診や触診、大腸内視鏡検査などを行い、痔の慢性化やがんなどの重篤な病気の診断ができます。早めに病院を受診することで、早期治療が可能です。
さいごに
便を出すときの痛みは、裂肛や痔核、便秘症、肛門周囲膿瘍が主な原因として考えられます。横になって安静にする、患部を温めるなど自宅でできる対処法もありますが、あくまで一時的なものです。
痛みや出血がある場合は、専門医の診察を受けることが重要です。症状が悪化する前に適切な診断や治療を受けることで、早期回復が期待できます。まずは、早めに肛門内科や肛門外科などを受診し、医師に相談しましょう。