人工透析の仕組みと透析の原因になる腎疾患について

  • 2023年1月25日
  • 2023年1月26日
  • 透析

腎臓の働きとは

腎臓は背部の腰の上あたりに左右1個ずつある臓器です。腎臓の働きは大きく分けて3つあります。

尿を生成し老廃物を排泄する

腎臓は体内の老廃物や余分な塩分などを尿として排泄する働きをしています。尿の生成は2段階に分けて行われます。まず、糸球体で老廃物がろ過され原尿が作られます。その後、尿細管で体内に必要なものを再吸収し、不要なものを尿として排泄します。原尿は1日に150リットルにもなりますが、尿として排泄されるのは1日に1.5リットルほどです。

ホルモンの産生

腎臓は赤血球の産生を促すホルモン(エリスロポエチン)、血圧を上昇させるホルモン(レニン)を作っています。また、カルシウムやリンの代謝に関与するビタミンDを活性型に変える役目もあります。

体の恒常性を維持する

腎臓は酸とアルカリを調整し、体内を弱アルカリ性に維持する働きをしています。また、体内の水分量を一定に保ったり、骨や副甲状腺とともに、ミネラルバランスを保ったりする働きもあります。

代表的な腎臓の疾患

腎機能が著しく低下する疾患には、大きく分けて急性と慢性疾患があります。

急性腎障害

急激に腎機能が低下する状態を急性腎障害と言います。急性腎不全とも呼ばれます。大量出血などによる腎臓への血流低下、薬剤や感染などが誘因となります。適切な治療をすれば快復が見込めます。

慢性腎臓病(CKD)

慢性腎臓病は慢性的に腎機能が低下していく病態の総称です。タンパク尿や糸球体のろ過機能(GFR)が正常の6割に満たない状態が3か月以上続くとCKDと診断されます。慢性腎臓病になる代表的な疾患には以下があります。

糖尿性腎症

糖尿病が原因で腎臓のろ過機能が低下する疾患です。

慢性糸球体腎炎

血尿やタンパク尿が続く慢性の腎炎です。「IgA腎症」によるものが、ほとんどです。IgA腎症は、免疫系の異常が原因とされ、免疫グロブリン(IgA)が糸球体にくっつくことで、腎臓に炎症を起こします。

腎硬化症

高血圧により腎臓の血管が動脈硬化を起こし血流が悪くなることで、腎臓が障害される疾患です。

多発性嚢胞腎

腎臓に嚢胞がたくさんできて腎臓が障害されます。遺伝的要因が強い疾患です。

ネフローゼ症候群

糸球体の機能障害によって多量のタンパクが尿に漏れ出てしまう病態です。喘息などのアレルギーが誘因になるなど、若年者で発症することもあります。治療効果が得られない場合は最終的に末期腎不全に陥ります。

人工透析について

腎機能が正常の10~15%まで低下すると、人工透析が必要となります。他の選択肢として腎移植がありますが、日本ではまだ普及が進んでいません。透析とは、人工的に老廃物の除去、電解質や水分の維持などを行う医療処置のことです。人工透析には血液透析と腹膜透析があります。

血液透析

血管に針を刺して血液を抜き出し、専用の機械(ダイアライザー)で血液をろ過して体内に戻す方法です。1回4時間、週3回が基本です。大量の血液を循環させるため、前腕部、手首近くの静脈と動脈をつなぎ合わせ太い血管(シャント)を作る必要があります。

腹膜透析

自分の腹膜を通して血液を浄化する方法です。自宅で透析を行えるのがメリットです。お腹に透析液を入れておくと、腹膜の毛細血管を通して体内の老廃物や余分な水分などが透析液に移行します。それを排液(体外に出す)し、新しい透析液を入れる作業を患者さん自身で1日に3~5回繰り返します。事前にお腹に管を通す手術が必要です。自動腹膜灌流用装置を用いて夜間睡眠中に透析を行う方法もあります。日中の透析液の交換が不要になるため、時間を有効に使えるのがメリットです。

まとめ

日本には約32万人の透析患者がいます。その内97%の方は血液透析です。活動の自由がある腹膜透析はあまり普及が進んでいません。患者さん自身で手技を覚えて実施しなければいけないこと、腹膜の機能はやがて低下し7~8年後には血液透析に移行しなければいけないことなどがネックになっています。いずれにしても腎機能が著しく低下した状態を放置すると生命の危険があるので、適切なタイミングで透析治療を開始する必要があります。そのためには個々のライフスタイルに合った透析治療を選び、シャントの形成など早めの準備をしておくことが大切です。