なぜアレルギーが発症するのか
「アレルギー」は日常でもよく耳にする言葉であり、特定の原因によって咳や鼻水、痒みなどが出現する病気であると認識できている方も多いと思いますが、なぜそのような反応が生じてしまうのか説明できる人は少ないでしょう。
アレルギーは、免疫反応におけるエラーが原因です。
通常、体内に病原菌などの異物が侵入すると、免疫細胞である白血球によって「抗体」が作られ、この抗体が異物を攻撃するという免疫反応によって健康が守られています。
しかし、人によっては食べ物や花粉などの本来体にとって有害でない物質や、特定の金属・化学製品などに対して免疫反応が過剰に反応してしまうことで、自分の体にも悪影響を与えてしまうことがあり、これをアレルギー反応と呼びます。
抗体にはIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類があり、アレルギー反応を引き起こす原因はIgEです。
アレルギーの原因となる食べ物や花粉などの成分を「抗原」と呼び、この抗原が体内に入ると白血球によって捕捉され、IgE抗体が産生されます。
大量に産生されたIgE抗体は、皮膚や粘膜に多く存在する「肥満細胞(マスト細胞)」の表面に付着します。そして再度抗原が体内に侵入した際に、抗原とIgEがくっつくことで肥満細胞が刺激され、肥満細胞内部にあるヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が大量に放出されます。
放出されたヒスタミンやロイコトリエンが鼻水やくしゃみ・痒みの原因となりますが、なぜこのような免疫反応のエラーが生じてしまうのかは原因不明です。
アレルギーの発症を避ける方法
アレルギーは年齢や遺伝的要因・環境要因など、さまざまな要因が複雑に関与して発症していると考えられていますが、そのメカニズムはいまだに解明されていません。
しかし、近年では医療の進歩とともに、アレルギーの発症を避ける方法がいくつか明らかになっており、ここでは3つの方法をご紹介します。
積極的な保湿
新生児期から肌の保湿を行うことで皮膚のバリア機能が改善され、皮膚のアレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎の発症を3割以上低下させることができると報告されています。
抗原となる食べ物も少量は摂取する
食べ物に対するアレルギーがあるからといってその成分を徹底的に除去してしまうと、体がその成分に慣れる機会が失われてしまい、かえって食物アレルギーの症状が悪化してしまうため、幼少期から少量でも摂取することが重要です。
もちろん、自己判断での摂取は危険を伴うため、必ず医師の指導のもと摂取する必要があります。
気道感染症を予防する
乳児期のウイルス感染症はアレルギー疾患の1つである喘息を発症しやすくなることが知られており、うがい・手洗いなどの基本的な感染対策が喘息の発症予防の上で重要です。
また、乳児期から幼児期になるにつれ、原因となる抗原が食べ物からダニ・ハウスダストに変化することが知られており、喘息の発症を予防するためには部屋の換気や適切な湿度管理が有用です。
アレルギー症状を和らげる方法
アレルギー症状を和らげるためには、下記のような治療法が用いられます。
抗ヒスタミン薬による治療
抗ヒスタミン薬による治療は、アレルギー症状の原因である肥満細胞から放出されたヒスタミンの作用を抑え込む治療法であり、咳や鼻水・くしゃみ・かゆみなどのアレルギー症状を軽減する効果が期待されます。
ステロイド療法
アレルギー反応では炎症が生じるため、抗炎症作用を持つステロイドも有用です。
喘息の場合は吸入で、アトピー性皮膚炎の場合は外用剤で、アレルギー性鼻炎の場合は点鼻薬で局所的にステロイドを使用します。
しかし、これらの治療はあくまでアレルギーの反応を軽減するためのものであり、アレルギーそのものが起こらなくなるような治療法ではないです。
免疫療法
一方で、唯一アレルギーの根治が目指せる治療法が免疫療法です。
アレルギー反応の原因となる抗原を少量ずつ体に摂取・投与することで、体をその抗原に慣れさせて、過剰に反応しないように体質改善させる治療法です。
抗原と接触する機会が増えるため、医師の指導のもとで治療を行う必要があります。
さいごに
この記事では、アレルギーのメカニズムや予防法、症状を緩和する方法について解説しました。
アレルギーの原因は完全には解明されていないものの、近年では医学の進歩によってさまざまな予防法や治療法が新たに発見されています。
家庭で実践できるような予防法も多いため、ぜひ実践してみると良いでしょう。
もちろん、免疫療法のような治療は医師の指導のもと、適切に行うことが重要です。